FXを取引している個人トレーダーにとって、確定申告する際に頭を悩ませるのが「経費」についてではないでしょうか。
ここでは、FX取引に関係する「経費」について、どのような経費が認められやすいのか、といったことをひとつずつ具体例を挙げながら確認していきます。
経費として認められればそれは節税とつながりますので、ここで学んでしっかり節税しましょう。
経費とは何なのか
経費とは、必要経費とも言って「その収入を得るために必要な出費」のことをいいます。したがって、FXでいう経費とは、FX取引で利益を上げるためにかかった必要な出費のことで、確定申告の際に申告することができる経費ということになります。
経費として認められるとどうなるのか
FXで得た利益は「雑所得」の申告分離課税扱いになりますが、確定申告の際に申告するのは「収入-経費」の部分となります。つまり、FX取引で年間100万円の利益があって、その利益を得るための経費が20万円かかったとすれば、それは「100万円(収入)-20万円(経費)」ということで課税対象は80万円に対して行われることになります。
したがって、経費として何も申告しない場合は利益分100万円すべてが課税対象となり、その課税額は20%の20万円(※)になります。これに対して、20万円が経費として認められれば、差し引いた80万円分が課税対象となりますので、その課税額は20%の16万円(※)となり、4万円もの差が出ます。
また、年間の利益が22万円の場合、3万円分の経費が認められれば、差し引き19万円ということで課税されない(非課税)で済みます。
※上記では便宜上、20%の課税で計算していますが、2013年1月1日から25年間に渡って、所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」が課せれることになりました。したがってこの期間の税率は、一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%(15%×2.1%)+住民税5%)となります。復興特別所得税の詳細については、「国税庁個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」を参考にしてください。
経費として認めてもらうために必要なこととは
経費というものがどういうことか分かった上で、ここでは経費として認めてもらうためには何が必要かを確認します。
その前にまず、経費として認めてもらうのに必要な要素はなにか?ということです。それは、
- FXのために出費していること
- 出費したことを証明できること
この2つが非常に重要です。以下、そのために必要なことを説明していきます。
1. 領収書は必ずもらう
第三者である税務署に対して、「こういう理由でこういった経費がかかりましたよ」ということを証明するのに、一番重要なのが「領収書」になります。
この領収書があれば、「私(あなた)はどこどこに○○円を支払いましたよ」という証明になります。この領収書がないと、いくらこれだけの支払いがあったよ、ということを言っても認めてはくれませんので、FX取引で必要な支出があれば必ず領収書をもらうようにしてください。
2. 領収書の宛名はどうする?
お店等で領収書をもらう際に「宛名はどうしますか」と聞かれることは多いです。
この宛名ですが、宛名がないと領収書として無効になってしまうかというとそうではありません。仮に宛名がなくても領収書として使うことはできますが、可能であれば「あなたの名前」でもらうようにしてください。ちょっと自分の名前を言うのは恥ずかしい、という気持ちも分かりますが、税務署に経費として認めてもらいやすくするために可能な限り書いてもらいましょう。
3. 領収書の宛名を自分で書くのはどう?
領収書の宛名について「ないよりはあったほうがいい」ということで、自分自身で宛名を書くのかどうなのか、という疑問が湧きます。結論からいうと、
自分で宛名を書くことは絶対にしないでください。
なぜなら、税務署は筆跡も見ているからです。どの領収書も宛名は同じ筆跡ということであれば、領収書自体が本当に正しいものなのか税務署もその信憑性を疑問視して、認められる領収書も認められない、といったことにもなりかねません。
したがって、領収書は可能な限りお店で記載してもらい、不可能な場合は宛名空欄のままにしておきましょう。
4. もらった領収書はどうやって税務署に提出する?
では、もらった領収書はどのように保管して、どうやって税務署に提出すればいいのでしょうか。
それは、私も行っている方法なのですが、ノートに貼り付けて保管しておくことです。領収書を貼る専用のノートでもいいですし、普通の大学ノートでも構いません。その上でのポイントは以下の2点です。
時系列で貼る
これは見る側(税務署)への配慮ですが、日時がバラバラとなっている領収書は確認が大変です。これがきれいに時系列で並んでいれば、見る側も楽ですし、きちんと領収書を取り扱っているという印象にも結びつきます。
貼った領収書の脇にコメントを書く
領収書を時系列で貼っていく際に、貼った領収書の脇にコメントを書いておくのをお勧めします。どのようなコメントを書くかというと、「いつ」「どこで」「誰と」「何のために」「どのような理由で」「何をしたので」ということを可能な限り書いておくことです。
税務署では実際に領収書に関しての説明を求められることがあります。その際にきちんと説明できるようにしておくためにも、領収書ごとにコメントを書いておくことで、自身の記憶も鮮明になるはずです。是非、きちんと説明できる領収書を保管しておいてください。
FX取引の経費として考えられる具体例
それでは、ここからは具体的な項目ごとに、「どのようなことが経費として認められやすいのか」をポイントを挙げながらみていきたいと思います。
1. パソコン代は経費で認められるか
自身でFX取引をする上で、必ず必要になるのがパソコンです。このパソコン、基本的には経費として認められやすいですが、場合によっては購入費の半分くらいしか認めてもらえないこともあります。それは、FX取引専用のパソコンでない場合です。
例えば、自宅で家族とともに使っている場合や、自分自身だけで使用していてもFX取引に関係する以外のことでも使用している場合は、パソコンの購入費用の全額ではなく、一部(例えば半分)だけ認められるといったことがあり得ますので、注意が必要です。ポイントは「FX取引だけで使用しているパソコン」ということです。
実際に、FX取引以外には使用していないのであれば、特にノートパソコンであれば税務署に持ち込んで中身を見てもらうことも有効です。
2. タブレットやスマホ代は経費で認められるか
現在は、以前と違ってパソコン以外にタブレット端末や特にスマホで取引する機会は多いと思います。では、このタブレットやスマホが「どこまで経費として認められるか」については結構厳しい、と思います。
特にスマホに関しては、電話ができたり、ネットでFX以外のことができたりと使用方法が多岐にわたっているからです。
ただ、どうしても認めてほしい場合は、例えば、タブレットやスマホでFX取引する際に、その画面をキャプチャーとして残しておく、というのは有効かと思います。「この時の取引はこのスマホから行った取引です」とキャプチャーを見せることで信用性が増しますよね。これで、タブレットやスマホ代の一部が経費として認めてもらうことができるかもしれません。
3. パソコンやスマホのネット料金(通信費)は経費で認められるか
このネット料金(通信費)については、基本的に認めてもらえることが多いと思いますが、上記で述べたパソコンやタブレット、スマホと同じで、「経費として認められた購入代金に比例して認められればいい」と思ったほうがいいです。
4. パソコンのモニター代は経費として認められるか
通常、パソコンといえばデスクトップでも本体一台とモニターも一台のセットが多いと思いますが、FXや株等の取引では複数のモニターを組合わせて、一度に複数のチャートを確認できるようにしてトレードを行っている方もいます。
このような方法でFX取引をしている場合は、基本的に他の使用目的は薄いと考えられますので、モニター代やモニターを固定する機材、机等も経費として認めてもらえることは多いと思います。念のため、モニターを写した写真を用意してもいいですね。
5. FX関連の書籍は経費で認められるか
トレードで利益を上げていくためには勉強も欠かせません。もちろん、FXに関係する書籍は経費として認めてもらえることが多いです。
ただ、念のために領収書の脇に「書籍のタイトル」を記載しておくことをお勧めします。なぜなら、なんでも「書籍代」だけですと、FXに関係のない書籍も含まれているのではないか、と疑われる可能性もあるからです。
6. 新聞代は経費で認められるか
日々のトレードに情報収集は欠かせないところであり、それを新聞で収集している方もいるかと思います。そこで「新聞は経費として認めてもらえるのか」ですが、これは日経新聞等の経済の専門誌なら認めてもらい易いかと思われますが、一般紙に関しては相場状況以外の記事が多いため、認めてもらうのは困難かと思います。
7. セミナー参加費用や交通費は経費で認められるか
FX取引をしていて、一度もセミナーに参加したことがないという方は少ないかと思います。セミナーといっても、一回数万円もする高額なセミナーから、無料で参加できるものまで多岐にわたりますが、経費としてはどこまで認められるでしょうか。
有料のセミナーに関しては、ちゃんと領収書をもらっておくことで申告に値すると思いますので、高額かどうかは別にして、有料のセミナーはちゃんと領収書をもらっておくことが大事ですね。また、セミナーに参加するための交通費も領収書(最近は、suicaやpasmo等のカードから印字した名刺大の紙が多いです)を提出することで認められやすくなりますね。
なお、無料セミナーに参加した場合の交通費は、そのセミナーを案内したもの等とセットで申告した方がいいです。
8. 有料メルマガや情報商材は経費で認められるか
普段のトレードを行う材料として、有料メルマガや情報商材を使っている方も多いと思います。これらに関しても、領収書とともにメルマガであればその内容の一部をコピーしたものを提出するなど、「こういう内容ですよ」ということが伝われば経費として認められやすくなると思います。
9. 交際費は経費として認められるか
トレードに関する情報収集を友人等から聞いて行っているという方もいると思います。では、その友人から話を聞く場所として喫茶店等を利用すると、お茶代は経費として認められるのでしょうか。これに関しては難しいかなと思いますが、もし申告したいというのであれば、「いつ」「どこで」「誰と」「どのような話をした」ということを領収書の脇に記載しておくことで認めてもらえる可能性はあるかもしれません。
10. 家賃は経費として認められるか
例えば、自宅の一室をトレード専用の部屋にしている場合、家賃の一部を経費として申告できるか、ということが考えられます。
この場合、法人や個人事業主として申告するのならまだしも、個人として確定申告で認めてもらうのは結構厳しいと思います。
11. 取引手数料は経費として認められるか
現在、多くのFX取引では取引手数料は無料のところが主流となっていますが、一部の会社では取引手数料がかかるところがあります。
例えば、「1枚あたり1,080円(税込)」といったものです。このような取引手数料はもちろん経費にあたりますので、FX会社からもらう書類(取引計算書等)に記載がればそれを申告しましょう。もしない場合は、自分で計算するか、FX会社からもらうようにしましょう。
12. スプレッドは経費として認められるか
多くのFX会社が取引手数料を無料にしている現在、取引にかかるコストはスプレッド(買値と売値の差額)のみの場合が多いです。ではこのスプレッド、取引コストとして見た場合に経費として計上することは可能なのでしょうか。
結論としては「できない」と判断しています。なぜなら、取引の結果である損益にはすでにコストであるスプレッドが反映されているからです。すでに反映されているものに更にコストを上乗せすることは二重での差引になってしまうので、スプレッドを経費として見ることはできません。
13. FX取引で使用するソフトウェア(EA等)は経費で認められるか
FX取引で利益を上げている方の中には、システムトレード(自動売買)をメインとして行っている方も少なくありません。このシステムトレード、必ず必要となるのはEAといわれるソフトウェアですが、これがないと売買ができないということで、経費として認めてもらいやすいかと思います。もちろん、購入時の領収書は必要です。
ちょっと気になる「個人事業主」とは
ちょっと余談ですが、経費を申告する場合、気になるのが「個人事業主」であります。そもそも個人事業主とは何なのでしょうか。個人事業主とは、「会社等の法人を設立しないで自身で事業を行っている個人のこと」をいいます。例えば、個人名で事業を行っている以外に、法人化していない単なる屋号(○○屋等)も個人事業主です。
サラリーマンも個人事業主になったほうが得?
FX取引で確定申告をする場合は、マイナス申告以外では基本的に年間で20万円以上の利益が出ている場合です。因みにFXによる利益が所得税の区分でいうと「雑所得」扱いになります。
副業としてFXを行っている場合、このFXの利益を個人事業主の事業所得として申告した方が経費の幅が広がるのでいいと思う方がいます。
確かに事業としてFXを行っているのであれば別ですが、FX取引での結果がプラスやマイナスを繰り返していたり、ずっとマイナスというのではそもそも事業として成り立っていない判断されますので、本業がちゃんとあって給与所得を得ている場合は「雑所得」として申告した方がいいです。
まとめ
これまで、「経費とは何か」から「何が経費か」まで具体例を挙げながら述べてきましたが、最後に重要なことをお伝えしておきます。
それは、経費として申告するのは自由でありますが、それを経費として認めるかどうかは「税務署の判断」ということです。
したがって、申告する側であるこちらとしては、どうしたら経費として認めてもらえるのか「証明する側はこちら」という意識が重要です。「本当にFXのために使ったんだからいいじゃない!」では通用しませんので、きちんと証明できるようにしておきましょう。
なお、確定申告について下の記事も参考にしてみてください。
■知らないと損する!FXの税金にかかわる確定申告と節税の2つのこと
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※ご注意
ここでの記事内容は、税理士に確認したり、経験則から掲載しているものですが、当然ながら絶対的なものではありません。あくまでも最終的な判断は税務署となりますので、予めご了承ください。