私自身、セミナー講師を始めて15年以上となり、この間会場セミナーとオンラインセミナーを合わせると20万人以上の方々に聞いていただきました。
セミナーではほぼ毎回質問コーナーを設けて様々なご質問を受けるのですが、その際に、回答に困ってしまう質問もたまにあります。
そこで今回は、あくまでも個人的な意見ではあるのですが、FXセミナーや金融セミナーの講師として困ってしまう代表的な質問9つとその理由をご紹介したいと思います。
また、最後のまとめでは「なぜ、そのような質問をしてしまうのか」についても触れていますので、是非ご覧ください。
今後どうなりますか?
これ、非常に困るんです。なぜかというと「漠然とし過ぎ」だからです。
まず、「今後」っていつ位までのことを言っているのか分かりません。それと、「どうなりますか?」というのはおそらく「上がりますか?下がりますか?」という意味だと思うのですが、これは「いつ時点のこと」を聞かれているのかが分からないですし、いつのことか回答していただいても結局は「分からない」んです。
「なんだ、今後のことも分からないやつが相場で勝てるわけないのに、何言ってるんだ」と思う方もいると思うのですが、相場は予想できれば勝てるというものではないんですね。
極端な話ですが、仮に現在100円の相場が、今後120円になることを予想して、それが当たったとしても相場で勝てるとは限らないんです。
例えばこれを見てください。
このチャートの左側のように、一瞬大きく下落してもすぐに反転して戻してしまうという相場もあるので、トレードは単に結果が予想できれば勝てるというものではないのであります。
それに、相場は常に変化するものなので、今後の予想を聞くのは構いませんが、それをずっと鵜呑みにすることは絶対にしてはいけません。
あくまでも「その時点で」ということに過ぎないのです。
あのアナリストはこう言ってるけどどう思いますか?
これも困ります。そのアナリストの方は様々な材料から相場を判断して言っているのに、それをその根拠も知らない私が何をどう言うこともできないんですね。
仮に100歩譲って「そのアナリストの方のことは分かりませんが、私はこう思います」ということは言えます。
でもそれは、あくまでも私のその時点での主観であって、相場はいつも変化していますから、今後もそう思うかは別の話です。
その意味で、都市伝説ではないですが「信じる信じないはあなた次第」で信じた責任はあなた次第ですよ、ということになるのです。
私は今後の相場はこう思うけどどう思いますか?
これも、上記の他のアナリストの方の場合と同じなんですが、ちょっと違うのは単に自分の相場観を聞いてほしい、という場合が多いんです。
その質問者の意見を聞いたうえで、「私はこう思いますよ」と答えて、それで終われば問題はないのです。しかし、困るケースとしては、「でも、こうこうじゃないですか!だからこうなると思うんですよ、それであってますか?」と続く場合なんです。
極端な話ですが、結局相場はどうなるかなんて分からないんです。それに対して結論に執着しても無意味なんですね。
重要なことはリスク管理であって、相場予想ではないことに気づいてほしいんです。
どうして上がって(下がって)いるのですか?
これ、私は分からないんです。というか、分かる人なんているのでしょうか。
なぜなら、相場は様々な要因が積み重なりあって今の価格になっているので、「これが理由です」なんて分からないんですね。
「これもひとつの原因かと思います」というのは言えますけど、でも、それを知ったからといってトレードには役には立たないんですね。
知識として知ることは大切だと思いますが、トレードで勝っていくための情報としては使えるものではありません。
どうして上がっているのかを知るよりも、相場が下がったときにどうするのか、というリスク管理をどのようにしていくかを決める方が余程重要なことなんです。
お薦めの銘柄を教えてください
これ、質問者としては聞きたいのはよく分かるんです。
例えば、今後上昇すると思う銘柄を聞くことで、銘柄選びの参考にしたいんですよね。
でも、回答する側からすると「何をもってお薦め」なのかがよく分からないので、答えに窮してしまうんです。人によってトレード環境やトレードスタイルが違うのに、万人に共通するものなんてないんですね。
「答えたくない」ということではなくて、あなたのことをよく知らないのに「何をどう答えていいのか分からない」というのが本音なんです。
今後、金利は上がると思いますか?
これは、金融政策決定者じゃないので分かりません。
個人的な意見を言うことは可能ですが、これも回答してお伝えしたところで質問者のトレードには何の役にも立たないのです。
ストップは何pipsにしていますか?
これはおそらく「あなたのリスク管理方法を教えてください」という意味かと思うので私なりに私が行っている方法を回答はさせていただきます。
でも、仮に私が「10pipsにしています」と答えた場合、それはストップを10pipsにすれば勝てるということではないんですね。
あくまでも「私はこうしている」だけであって、10pipsなら勝てる、という意味ではないんです。
トレードは投資家一人一人のスタンスや資金量や目指すべきところが違うので、方法なんていくらでもあるのです。
それを、表面的に「○○をすれば勝てる」という単純なことではないのです。
どんな取引手法なら勝てますか?
この質問、「勝てる手法が分かれば相場で勝てるようになる」と思っている方なんです。質問したいのはよく分かるのですが、答えとしては「相場は手法で勝てるのではないんです」という回答になります。
当然、何の意味もなく「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」的にトレードを行っても勝つことはできません。
例えば、似たような質問で「○○のインジケータ(分析機能)のパラメータ(数値設定)はどの数値に設定すればいいでしょうか」というのがあります。
これも「設定数値をこれにすれば勝てる」とうことではないのです。したがって、この手法なら勝てるというものも存在しません。勝てる手法自体「幻」であることを知ってください。
簡単に勝つ方法はないですか?
これ、回答としては「ないです」です。
実際にはあるかもしれませんが、私の周囲で実際にトレードで生計を立てている人で、簡単にそうなった人を私は知らないです。
もし、どうしても簡単な方法を知りたいなら、「世の中には簡単に勝てるといった広告がたくさんありますので、それを自己責任で試してみてください」としか言えないんですね。
これはあくまで私の経験則なのですが、簡単な方法を求めている人は、結局は遠回りしてしまっている方が多いな、という印象があります。
投資はギャンブルではありません。また、トレードは技術であります。ちゃんと練習すれば身につくのに、それを避けたところで身につくことはないんですね。
まとめ
ここまで、私の経験則でセミナー講師として困ってしまう質問を挙げてみました。
再度、なぜこのような質問をされるのかを考えたところ、私なりの答えとしては
質問者が聞きたいことと、回答者が答えたいことに大きなギャップがある
ということです。
おそらく質問者は「どうすれば勝てるのですか?」ということを様々な角度からされているのだと思うのですが、回答する側からすると、「その質問では求められている回答は難しい」になってしまうのです。
つまり、質問される方は
- 勝てる手法があれば相場で勝てる
- ○○をすれば勝てるようになる
- これを使えば勝てるようになる
- この銘柄を選べば間違いない
- この情報を知っていれば勝てる
等々といったことを思っているのですが、回答する側からすると「相場で勝てるようになる肝はそこではない」ので、ギャップが生じてしまい困ってしまうのです。
いろいろと生意気なことも書いてしまいました。
でも、このギャップをいかに埋めて、一人でも多くの方を勝ちトレーダーへと導いていくのが私の仕事なので、これからも多くの投資家の方々と頑張っていきたいと思います。