FX取引を行ううえで、絶対に理解しておかなければならないルールにロスカットがあります。このロスカット、多くの方は悪いイメージしか持っていませんが、実は投資家保護のための重要なルールであります。
ここでは、ロスカットの基本的な理解から、初心者には難しいロスカットに対する考え方まで詳しくご紹介していきます。
1. ロスカットとは
ロスカットとは、保有ポジションの含み損(計算上の損失)が一定のレベルに達したときに、それ以上の損失拡大を防ぐために、ポジションを強制的に決済するルールのことをいいます。
FXは外貨預金と違って、元々本来よりも少ない資金(証拠金)で取引しているので、投資資金以上のマイナスとなる前に、一旦取引を停止させるのがロスカットのルールです。
2. ロスカットされるとどうなるのか
ロスカットのルールが執行されると、これまで保有していた
- すべてのポジションが
- 自動的(強制的)に
- 決済されてしまいます。
一部のポジションだけとか、ちょっとだけ待って、というのは一切通用せず、24時間いつでも執行されてしまうのがロスカットです。そのため、寝ている間にロスカットとなって、朝起きたら投資資金がほとんど無くなっていた、ということもあり得ます。
例えば投資資金が10万円で、1ドル=100.00円の時に1万ドルの買いポジションを持ちましたが、その後ドル円の価格が下落した場合、どこまで価格が値下がりすればロスカットになってしまうのでしょうか。
まずは分かりやすい100%ルールによるロスカットの例を見てみましょう。
投資資金が10万円で、そのうちトレードに必要な証拠金(必要証拠金)として4万円を使用しているので余剰金は6万円(=10万円-4万円)になります。100%ルールとは、この余剰金がなくなった時点でロスカットになることですので、余剰金である6万円がなくなる値幅を計算すれば、ロスカットになる価格が分かります。
この場合、ドル円で1万ドルの取引をしていますので、1円の値動きが±1万円になります。ということは、6円値下がりすると-6万円になるので、94.00円(=100円-6円)になると余剰金がなくなるので、そこでロスカットになってしまいます(※)。
※実際には価格が値下がりすると、証拠金も比例して少なくなりますし、
また、スワップポイントも加算されることから、厳密にはロスカットの
価格はズレてしまいます。
3. なぜロスカットになるのか
FXトレーダーなら、どうしても避けたいのがロスカットですが、このロスカット、なぜ導入されているのでしょうか。それは以下の2つの理由があります。
- 少ない資金で始めているので
- 投資資金以上のマイナスを避けるため
それではひとつずつ見ていきましょう。
3-1. 少ない資金で始めているので
FXというのは、外国為替証拠金取引ですから証拠金を使用した取引です。例えば、1ドル=100.00円の時に1万ドルの買いポジションを持つには、4万円の証拠金が必要です(※1)。
本来であれば100万円必要な取引(※2)が、FXなら証拠金の4万円以上の資金があれば同じ1万ドルの取引ができてしまうのです。
ただ、投資資金が少ない状態である以上は、使用している証拠金以外の余剰金がなくなってしまえば、一旦ポジションを強制決済してしまいます、ということなのです(※3)。
もし、いつまででも(含み損がどれだけ膨らんでも)取引が継続可能としてしまうと、その間の不足分はFX会社が負担しなければならなくなります。また、仮にその不足分を顧客から回収できなかった場合は、FX会社の損失分となってしまうのでそれだけFX会社のリスクが大きくなってしまいます。そのようなことから、ロスカットのルールが導入されています。
※1 100.00円×1万ドル×4%(証拠金率)=4万円
※2 100.00円×1万ドル=100万円
※3 100%ルールの場合
3-2. 投資資金以上のマイナスを避けるため
FXでロスカットが導入されている2つめの理由は、投資資金以上のマイナスを避けるためであります。多くの方は投資後に不足金が発生することを当然ながら嫌います。せっかく資産を増やそうと投資したのに、後日、不足金が発生したので資金を追加してください、というのは誰でも嫌なことです。また、追加入金したくてもできない場合もあります。その場合はFX会社の負担となってしまうため、これもやはり避けたいところです。
そこでFXでは、投資資金がマイナスにならない一定レベルのところをFX会社の基準で決めて(100%や50%等)、そのレベルを超えてしまうと自動的に決済してしまうロスカットルールを導入しているのです。
3-3. ロスカットはFXだから可能な仕組み
実はこのロスカット、CFD取引を含むFXだからこそ可能な仕組みなのです。例えば、株式や商品先物等の取引は取引所を介して行う取引所取引ですが、この取引所取引は、買いと売りの数量が合わないと取引することができません。また、値幅制限(ストップ高、ストップ安)といって、価格の異常な暴騰・暴落を防ぐための制限があるので、ロスカットのルールを採用することができないのです。このロスカットのルールがあるからこそ、大きな損失を防ぐことができているのであります。
4. FXで借金することはあるのか
ロスカットは、投資資金以上のマイナスを防ぐことを目的のひとつとしていますが、保証しているものではありません。場合によっては、投資資金以上のマイナス(借金)となってしまうこともあります。
では、どのような場合に借金となってしまうのでしょうか。それは、窓空けといって価格(為替レート)がつながらずに飛んでしまうような場合に、投資資金では補えないようなことが発生したりします。
例えば、FXも相場状況によっては為替レートが突然大きく変動することがあります。特に、取引がされていない土日に為替レートに大きな影響を及ぼすことがあると、金曜日の終わり(土曜日の朝)に終了した終値よりも大きく乖離した(離れた)状態で月曜日の朝はスタートします。
上記のチャートはユーロドルですが、価格が離れてスタートしている(窓空け)のが分かります。このように、大きく価格が乖離してスタートした場合、その乖離分(価格差)が大きければ大きいほど損失分も大きくなり、それが投資資金以上の損失になると、その分はマイナス(借金)ということになります。
マイナスとなってFX会社に借金となると、当然請求が来ますのできちんと入金するようにしましょう。
4-1. FXで借金をしないようにするには
ロスカットのルールでも、相場状況次第では投資資金以上のマイナスが発生して借金となることもあることを学びましたが、借金を防ぐことは可能なのでしょうか。
答えは可能です。100%ではありませんが、ポジションンを翌週に持ち越さない(ポジションはその週のうちに決済してしまう)ようにすれば、余程のことがない限りは週末リスクによる投資資金以上のマイナスが発生することは防ぐことができます。
4-2. 週末のポジション持ち越しリスクを避けるための逆指値は有効か
上記で、週末リスクによる投資資金以上のマイナスを防ぐために、ポジションの持ち越しはしない、ということを紹介しましたが、損失を限定させるための逆指値(ストップ)は有効なのでしょうか。
答えは「ノー」有効ではありません。なぜなら、逆指値(ストップ)が執行されるのは設定した価格以下(もしくは以上)になってからになるからです。
例えば、ドル円で100.00円の買いポジションを持っていて、現在値が96.00円、逆指値(ストップ)の設定価格(決済価格)が95.00円の場合で見てみます。
この場合、週末の終値が95.10円であれば逆指値(ストップ)は執行されないです。その後、土日に為替レートに大きな影響を及ぼすような大きな出来事があって、翌月曜日の始値が94.50円でスタートしたら、この94.50円で逆指値(ストップ)は執行されます。
もちろん、逆指値(ストップ)を設定していなくても、もしロスカットになってしまうレベルの場合はこの価格でロスカットになりますので、どちらも変わらないということになります。
したがって、週末リスクを回避するにはポジションを持ち越さないことが一番の防御方法となるのです。
5. ロスカットされないためには
これまでロスカットについて、いろいろと学んできました。結局のところ、絶対にロスカットにならない方法はあるのでしょうか。答えは「あります」です。
それは、総代金以上の投資資金で取引をすることです。例えば、1ドル=100.00円のときに1万ドルのポジションを持つなら、100万円以上の投資資金で行うことです。また、1ドル=120.00円ならば、同じ1万ドルでも120万円以上の投資資金で取引を行うことです。
そうすれば、ロスカットの心配は不要となります。ただし、FXのメリットでもある資金効率の良さはなくなってしまうので、そこは自己の投資スタイルとの兼ね合いになります。
6. まとめ
ロスカットは、自身の資産を守るために必要なものであります。うまく利用してあげることでその効果を十分に発揮することができますので、自身のトレードスタイルに合った使い方をしてください。