FXは金融商品の中でも比較的少額で始められるということもあって、投資初心者の方にも人気の商品です。
でもこのFX、日本で開始されてからまだ20年程度ですが、ここまで来るのにいろいろな歴史をたどってきました。FXの歴史を一言でいうと「悪徳業者との戦いの歴史」でありました。ここでは、FXトレーダーが知ってくべきFXの歴史と、FX業界がどのような変遷をしてきたのかを学びます。
1. -1998年-外為法の改正
今では信じられませんが、日本では1998年までは為銀主義といって、外国為替公認銀行(=公認された一部の金融機関)しか外国為替の取引をすることができませんでした。
1-1. 為銀主義の撤廃
そんな中、外為法(=外国為替及び外国貿易法)が規制緩和により法改正となって、これまでの為銀主義が撤廃されて、外国為替公認銀行だけではなく企業間においても自由に外国為替の取引ができるようになりました。これが、「為銀主義の撤廃」です。
1-2. 日本で初めてFXが開始
1998年の外為法の改正により、為銀主義が撤廃となったことで民間企業間でも自由に外国為替取引ができるようになりました。その中で、現在のひまわり証券が当時米国等ですでに取引されていた外国為替の証拠金取引を日本で初めて導入し、商品名を「マージンFX」としてサービスを1998年10月に開始しました。
私も2001年よりひまわり証券の社員としてFX業務に携わっていました。当時はまだ投資資金が自由に決められず、口座開設をしても初回の入金額は300万円からだったんです。要は初回に300万円を入金できない方はFXの取引をすることができなかったんです。因みに初期の頃はインターネット取引も当然なく、すべて電話での取引(取引単位も10万通貨単位)でありました。
1-3. 業界拡大に伴う悪徳業者の蔓延
FX取引を行う個人投資家の増加に伴い、それを扱うFX業者も急拡大していきました。投資家と業者が増えていくことは業界にとってもいいことでFX業界は急成長していきました。
しかし、そこにその後の業界を震撼させる事態が時間を待たずに増えていくことになったのです。それが「悪徳業者の増加」です。当時のFX業界は急拡大に伴う法整備がまったく追いつかず、まさに「無法状態・無法地帯」の状況でした。
ほとんどのFX業者はその信用に基づいてきちんとした業務を遂行していましたが、中には規制がないことをいいことに残念ながら「やりたい放題」の悪しき業者も急拡大していきました。ここで悪徳業者がどのようなことをしていたのか少し紹介します。
※当時はまだインターネット取引が普及している状態ではありませんでした。
- 顧客からの入金(投資資金)と自社の会計を一緒に計算して、分別管理していなかった。会社経費を顧客の投資資金から払っていた。
- 顧客からの注文をカバー先に流さずに、自社内ですべて処理していた。
- 顧客からの出金依頼に対して、いろいろと理由をつけて出金させず、ある程度(数億円)が集まったところで、急に会社自体を無くして逃げてしまう。
集約するとこんな感じです。
そのため、FX自体は優れた金融商品であっても、それを利用した悪徳業者がはびこってしまった関係で、資金を持ち逃げされた方々のニュースが流れるようになったりと社会現象にもなっていきました。そのため、FXそのものが悪い危険な金融商品とのレッテルが貼られるようになっていきました。
このような事件等を通して、FX業界は不信感だらけの業界になってしまったのです。
2. -2005年-金融先物取引法の改正
FX業界の急拡大に伴って悪徳業者も増加していき、それが社会現象にまでなっていっていることを重く見た当局は、とうとうこれまでの金融先物取引法を法改正することで業界の清浄化に乗り出しました。それが2005年であります。
この金融先物取引法(以下、金先法)が改正されたことで、多くの悪徳業者の悪行を締め付けることに成功しました。ここで法改正によって具体的に何が変わったのか(導入されたのか)を見てみます。
2-1. FX業者の新規参入審査登録制
金先法が改正される前は、誰でも自由にFX業を営むことができました。それが改正されたことで、新たにFX行を行うには当局による審査登録が必要となったのです。審査があるということは、資本や人的構成(人の確保)がしっかりしていなければなりませんので、ちゃんとした会社以外は新たに参入することができなくなったのです。
2-2. 不招請勧誘の禁止
不招請勧誘(ふしょうせいかんゆう)とは、顧客の依頼や同意を得ないで勧誘行為をすることをいいます。したがって、「不招請勧誘の禁止」とは顧客が同意してないのに、もしくは「いらない」と言っているのに勧誘してはならない、ということをいいます。もっと簡単にいうと「顧客が望んでいないのに、無理に勧めてはいけない」ということです。
最初は興味があって話を聞いていも「もういらないな」と思って、以降の勧誘行為をしないよう要請すると、以後の勧誘は一切できなくなったんです。これで、しつこい勧誘はできなくなりました。
2-3. 適合性の原則
適合性(てきごうせい)の原則とは、「投資は取引に適した人にしか勧めてはならない」ということで、例えば、これまでまったく投資経験のない高齢者や未成年者(取引に不適切な人)に対して、いきなりFX取引をさせてしまうようなことを指します。
このように、FXは元本を保証しない商品ですので、これら不適合とされる方に取引を勧めてはならないのです。
2-4. 自己資本規制
自己資本規制(じこしほんきせい)とは、証券会社等の金融機関に対して経営の健全性と投資家保護のために自己資本の一定基準のことです。そして、この基準のことを「自己資本規制比率」といって、この基準を下回ったまま経営を継続することはできません。したがって、会社資本がしっかりしていない会社はFX業を営むことができないことになります。
ちなみに、現行の金融商品取引法においては、以下の基準となっていて、抵触すると金融庁は措置を執行します。
- 140%を下回ったとき⇒金融庁に届出を要する。
- 120%を下回ったとき⇒金融庁は業務の方法の変更を命じ、財産の供託その他監督上必要な事項を命ずることができる。
- 100%を下回ったとき⇒金融庁は3ケ月以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができる。
2-5. 外務員の登録制
金先法が改正されるまでは、誰でも自由にFX業を行うことができましたので、FXを営業する営業マンに対しても何も規制はありませんでした。そのため、何の知識がなくても勧誘ができていたのです。そこで改正金先法では、外務員の登録制を導入して、登録者以外による営業行為(勧誘行為)を禁止しました。当然、外務員登録には試験の合格が基準になりますので、一定の知識がなければ外務員となることもできなくなったのです。
3. -2007年-金融商品取引法が改正
これまで、2005年の金先法の改正によって行われた規制等をご紹介してきましたが、ここからは2007年に改正となった金融商品取引法(以下、金商法)について学びます。
金商法(=金融商品取引法)はもともと証券取引法という法律でした。当時は、各金融商品によっても法律が多岐にわたっていましたので、金融商品に関する法律をひとつにまとめる形で、証券取引法が改正して金商法が施工されました。
なお、金商法の施行にともない、これまでの金先法(=金融先物取引法)をはじめ、外国証券業者に関する法律や有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律、抵当証券業の規制等に関する法律等も金商法に統合されました。
4. -2010年-信託保全の義務化
2005年の金先法の改正によって行われた規制等で、これまで蔓延していた悪徳業者は姿を消していきました。そのため、健全な業者が残ってきましたので良くなった反面、そこからはサービス競争が始まっていったのです。
実は、今では当たり前となっている信託保全も最初は義務ではなく、サービスの一環でありました。それが、2009年の内閣府令改正によって「全額信託保全の義務化」が決まったのです。これにより、FX業者の資産と顧客の資産は完全に分別されることになり、仮にFX業者が破たんとなってしまっても、顧客資産(投資資金)は守られるようになりました。
※これは取引による損失を保証するものではないことは当然のことです。
5. -2010年-レバレッジを最大50倍までに規制
2010年2月より信託保全が義務化されましたが、同じく2010年の8月からはレバレッジ率を最大で50倍(=2%)までに抑えることが決まりました。
これまでレバレッジに関しては自由に決めていたので、400倍とか500倍といった取引が可能でした。それが金融庁による「投資家保護」「FX会社のリスク管理」「過当投機の防止」といった観点からレバレッジに関しても規制されて最大50倍(=2%)までしかできなくなりました。
- レバレッジ最大50倍(=2%)とは、仮に投資資金が100万円ならば最大で5,000万円分(100万円の50倍)までの取引が可能ということです。
6. -2011年-レバレッジを最大25倍までに規制を強化
2010年8月からは、レバレッジを最大50倍にまで規制しましたが、その第二弾が翌年である2011年8月から始まり、レバレッジは最大で25倍(=4%)にまで規制されました。現行と同じであります。
これにより、仮に投資資金が100万円ならば最大で2,500万円分(100万円の25倍)までの取引が可能ということになったのです。
7. まとめ
ここではまとめとしてFXの歴史を年表にしてみました。現在は、投資家保護に守られながら私たちはFX取引ができています。